都電荒川線殺人事件(西村京太郎・光文社)
都電荒川線で東京の怖さを知った話
都電荒川線ってあるじゃないですか。
最近、東京さくらトラムという名前に変わったそうなのですが、
昔から変わらず三ノ輪橋〜早稲田の間の12.2Kmを地域の方々の足として愛されている路面電車のことですよね。
僕も先日、この都電荒川線に初めて乗る機会があったんですね。
上京して3年が経つのにまだまだ行ったことのない場所も実は多いんだなと、電車を待ちながらTOKYOの奥深さを改めて感じていると、ちょうど電車がやってきました。
レトロな感じと言ったらものすごく陳腐な表現なのですが、まさにレトロな感じの車体で何十年も昔から地域に愛されて育ってきたんだろうなと想像がすぐにできるような、そんな雰囲気でした。
Suicaでピッとしていよいよ乗り込んだのですが、
なんか車内が臭え・・・。
なんの臭いだろうと考えたのですが、頭に浮かぶのはもう一つしかないんですね。
おしっこです。
誰かがシンプルに車内でおしっこを漏らしたのか、ものすごく臭うんですよ。
というより、「絶対お前が漏らしたよな」というおっちゃんが奥の方の席で堂々と座っているんですよ。
結構混んでいた時間だったのですが、おっちゃんの周りだけスカスカなんですよね。
みんな臭いはずなんです。
車内に入った瞬間の僕で相当臭かったので、みんな臭いはずなんです。
それなのにみんな無視なんですよね。
僕は関西の人間ですから、良くも悪くも囃し立てますよね。
「なんか臭ない??」
「え、これなんの臭い!?」
「やば!」
「おっちゃん大丈夫??」
とまあこれくらいいきたいわけですよ。
東京の人はおしとやかなのか大人しいのか分からないですが、
腹の中では「臭え臭え」と思っていてもじっと黙って耐えていたんですよね。
窓も開けずに。
そこに僕は東京の人の怖さを感じました。
ふと今文章を書きながら思ったのですが、電車内のパワーバランスで表すとしたらこうなりますよね。
強 運転手さん
↓ 漏らしたおっちゃん
↓ 東京の人たち
弱 僕
運転手さんは乗客の命を預かっているも同然なのでトップに君臨するのは当たり前ですが、
漏らしたおっちゃんに恐怖を抱いている東京の人たちに恐怖を抱いている僕という構図になりますね。
車内の中で一番の弱者に成り下がってしまった僕ですが、関西人として何か爪痕を残そうと思い、近くの窓を恐る恐る開けたんですね。
そりゃあもう開ける時はものすごく怖かったですよ。
いつおっちゃんがキレだすか分からないわけですから。
急に「開けてんじゃねえ ぇ ぇぇえええっっっ!!!!」と怒鳴られてもおかしくないわけです。
幸い、おっちゃんがキレてくるということはなかったので一安心していたのですが、
もう大丈夫だと思ったのか、東京の人たちが一斉に窓を開け始めたんですね。
お前ら我慢してたんかよ!!!
と思った矢先に、窓を開けられて安心したのか、
隣にいたおばちゃんが「臭いよねえ」と話しかけてきました。
「ほな開けろや」
そう言いたかったのですが、「そうですよね〜エヘヘ〜」と愛想笑いをした時にちょうど目的地に到着したので無事に都電荒川線から降りることができました。